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食を通じて食卓に笑顔を。皆が笑顔で働き続けられる会社と社会を作る

トップランナーたちの仕事の中身#066

柴田真希さん(株式会社エミッシュ代表取締役、管理栄養士)

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 ほがらかな笑顔に色鮮やかなエプロン姿。テレビや雑誌、Webメディアなどで料理を中心にして活躍する柴田真希さん。2012年に株式会社エミッシュを立ち上げ、自身の企業活動を通じて食卓や社会に「笑み」を増やすことを信念に事業に取り組んでいます。

3社を経て見つけた「独立」という働き方

 柴田さんの会社の名前は、「エミッシュ」。フリーランスとして独立した当初は「Mish Kitchen(ミッシュ・キッチン)」という屋号を使っていました。
 Mishは、「M+dish(料理)」という柴田さんが自ら作った言葉。My(私らしい料理)、Millet(雑穀のある料理)、Mama(母が作る料理)、Minna(みんなで食べる料理)の4つのMは柴田さんが管理栄養士として世の中に提案したい料理や食卓のイメージです。
 柴田さんがフリーランスとして独立したのは、社会人9年目のとき。栄養士養成校の短期大学を卒業後、委託給食会社に3年、その後ベンチャー企業に勤めて栄養カウンセリング業務を担い、さらに大手卸売業で食品の企画・開発・営業などに従事した後でした。
 今でこそ、企業などから依頼が来るさまざまな仕事に果敢にチャレンジしている柴田さんですが、1社目と2社目で給食管理と栄養カウンセリングの経験をした後は、「管理栄養士になったのはいいけれど、自分が管理栄養士としてやりたいことがわからない...」と、3か月ほど無職の状態でいたことがあったと言うので驚きです。そんなときに見つけた求人に「食品の企画・開発・営業」とあり、「企画も開発も営業も未経験だったけれど、この中には3割くらいは好きと思える業務があるかもしれない」と、やや消極的な気持ちながらも新たなチャレンジをすることにしたのです。

 この会社では、スーパーマーケットなどのクライアントから「夏のお弁当」や「春のおかず」などの依頼が来るので、柴田さんはそれに合わせてメニューを考えます。どの会社のどの工場でならクライアントのニーズにかなう生産ができるのか、といった調整を何社もの間に入って行いました。その中で、この担当者にはこのようなプレゼンテーションが響く、あの会社にはこういう雰囲気の提案が喜ばれる、というように、相手の企業や担当者に合わせて、資料作りやデモンストレーションのやり方を変えていくスキルが身につきました。
 「正解も100点満点の基準もない。だからこそ、もっといい提案をしたいと考えるようになりましたね。挫折しそうな場面ももちろんありましたが、私だけができないわけではないと思うようにして、自信をつけていきました」
 この会社でのさまざまな経験が、フリーランスとその後の会社経営での柴田さんの礎となりました。

すべてが実績ゼロからのスタート

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 大忙しの会社員時代、柴田さんは前述の「M」をイメージし始めました。My、Mama、Minna...。結婚をして出産・育児をしながらも「働きたい!」という思いを叶え続けるためには出張や転勤のある今の仕事では難しい。そう考えて、自ら働きやすいフィールドを作り出すことを決めて、独立しました。2009年、社会全体の流れとして「育児介護休業法」や「次世代育成支援対策推進法」の改正により、女性が働きやすい環境の整備が加速したタイミングではありましたが、柴田さんは自ら道を切り開くことを選択しました。
 もう一つのMである雑穀(Millet)との出合いもこの頃でした。雑穀についてのセミナーで、雑穀の魅力に取り憑かれた柴田さん。地方の雑穀農家に足を運んで、雑草取りなど一緒に作業をし、さまざまな雑穀畑を見学させていただきました。料理教室を開いたり、雑穀が食べられる飲食店で交流会を開いたりすることで人脈が広がり、レシピ作成や監修などの仕事を頼まれるように。
 また、フリーランスになって以降、ブログを毎日必ず更新することも決めて続けて来ました。書いた記事が溜まれば溜まるほど、食と栄養を専門とする柴田さんの信用が増していき、「ブログを見ました」という書き出しで仕事の依頼のメールが舞い込むようになってきたのです。独立後、仕事が順調に進み始めた背景には、こうした一つひとつの活動があります。
 「フリーランスになって実績がゼロというのは、すべての人が通る道。独立しても仕事の依頼が続けてあるのか不安を感じるのもみんな一緒です。経験がないのであれば、自分で作ることができます。例えば、自分で料理教室をやってみる。そうすれば、主催者としての実績も、講師としての実績も0から1になりますし、何より自分が自信をもってご依頼いただいたお仕事に取り組むことができます。」

たくさんの食卓で「笑み」が増えますように

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 屋号から名称を変えるとき、柴田さんはMishの前に「エ」を付けて「エミッシュ」という社名にし、「食卓を笑みでいっぱいに」を会社のモットーとしました。現在、社員は8名で、管理栄養士のほかに営業担当、経理担当に加えてカメラマンがいます。2012年に設立し、昨年で10周年を迎えました。この間に、柴田さんは2人の子どもを出産し、今も子育てと並行しながら、管理栄養士として、社長として「働くこと」そのものを楽しんでいます。
 「自分の仕事人生はずっとフリーランス(個人事業主)でいい」と思っていた柴田さんが、フリーランスを辞めて会社を構えることにしたのは、「自分のためではなく、社会のために仕事をしたいと思えるようになったから」でした。
 株式会社エミッシュでは、柴田さんのフリーランス時代と同様に、食品メーカーやマスコミから依頼される商品開発やレシピ提案、コンサルティング、講演、ネットショップ運営などのほかに、管理栄養士・栄養士、フードコーディネーターとして独立して働きたい人と仕事を発注したい企業を結ぶキャスティング事業「Love Table Labo.」も手がけており、登録している管理栄養士・栄養士たちはすでに800名にも及びます。
 この事業には、柴田さん自身が独立した当初手探りで0から1、1から2を経てコツコツと仕事を得てきた経験から、その過程をもう少しスムーズに通過して、自信を持って社会で活躍する管理栄養士・栄養士を増やしていきたいという思いが込められています。

 管理栄養士・栄養士としてもっと飛躍をしたい人、フリーランスや副業で一歩踏み出したい人たちを後押しするため、柴田さんは無料のメールマガジン「スキルアップ通信」を配信したり、「はじめてのフリーランス はじめての会社経営」という教材を販売しています。まだ会ったことのないメールマガジンの読者や教材の購入者から、「転職に成功しました」や、「新しい仕事を受注できました」という喜びの声が届くことも増えてきました。
 独立後、自分の仕事や自社の経営に邁進してきた柴田さんだが、40歳を迎え、後進の管理栄養士・栄養士のために活躍するフィールドを作るという責任を自分事化しなければならないという気持ちが強くなりました。
 「私一人ができることは限られているので、当社のスタッフや登録メンバーさん、メルマガの会員さんなど、同じような思いを持った管理栄養士・栄養士の仲間が増えることで、あちこちの食卓に笑みがいっぱいになるとうれしいです」

プロフィール:
2001年女子栄養大学短期大学部卒業後、給食管理、栄養カウンセリング、食品の企画・開発・営業等の業務に携わった後、2009年に独立、2012年に株式会社エミッシュを設立。現在は、料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メーカーや飲食店のメニュー開発やプロデュース等を手掛ける。管理栄養士。

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