藤原紀香さん登場!命を支える「栄養の力」を考える市民公開講座を開催!
2025/11/25

「栄養の日・栄養週間 2025」を記念して開催された市民公開講座、第46回健康づくり提唱のつどい。メインプログラムのトークセッションには、主人公が栄養士・管理栄養士として人の心を結んでいくストーリーで話題となった2024年度後期 連続テレビ小説『おむすび』から2名のゲストをお招きしました。同番組の制作統括を務められた日本放送協会の宇佐川隆史さんと、管理栄養士・西条小百合役で出演された藤原紀香さんです。中村丁次会長とともに、【みんなで考えよう、栄養の力】をテーマに、それぞれの立場から栄養について語っていただいたトークセッションをダイジェストでお届けします。
歴史に残る作品となった『おむすび』
最初の話題は連続テレビ小説『おむすび』が企画された経緯について。制作統括の宇佐川さんに起点となった思いを振り返っていただきました。
「企画の検討を始めたのは2022年からです。朝ドラで食を扱ったものは過去にもあり、"食べることは生きること"というテーマのもと、もう一歩踏み込んだ内容にしたいと調べる中で栄養士・管理栄養士さんの存在に行き着きました。私たちの食に関する知識の多くは栄養士さんのおかげ。これだけ支えていただいているにもかかわらず、存在が当たり前になり過ぎて感謝することはなかなかありません。取材でお会いした栄養士・管理栄養士の皆さんは素晴らしい方ばかりでした。その活動にきちんとスポットを当てたいと思いました」。
『おむすび』の放送は日本栄養士会にとっても大きな話題でした。中村会長は「お話を聞いて舞い上がりました。人生で最もうれしい瞬間でした。栄養は目に見えるものではありません。その栄養を扱う専門職である栄養士は目立たない存在ですが、社会的な脚光を浴びるきっかけになると思いました」と、企画当初から大きな期待を寄せてきました。
しかし、一方で中村会長の中には栄養士がドラマになるのかという心配もあったと明かします。「最初に宇佐川さんと対談した際、ちゃんとドラマになるのですかと宇佐川さんに聞いたんです。そうしたら、大切な話を面白く伝えるのは私の役割です、と力強く答えてくださって、信頼できる方だなと思いました。栄養は健康だけでなく命を保証するもの。生きるための原点、生きることの科学です。そうしたメッセージを含んだ『おむすび』は、歴史に残る作品になったと思います」。
藤原紀香さんが演じた西条小百合は、主人公が管理栄養士の道へ進むきっかけとなった重要な役柄です。配役の連絡を受けたとき、藤原さんの喜びは計り知れないものだったそうです。
「人は食で作られるという、生きていくうえで切り離せないテーマの作品に参加できることに喜びを感じました。それに加えて、個人的にも管理栄養士をしている大学時代の友人がいます。私がミュージカルなど過密なスケジュールに取り組むにあたって、彼女に食事をサポートしてもらったこともあります。どうすれば相手を元気にできるかを追い求める熱意や探究心を近くで見ていたので、西条小百合の話をいただいた時は本当に嬉しかったです」。
その後の役作りでは、言葉選びなどを監督と相談しながらキャラクターの表現に取り組んだと振り返ります。「西条は患者さん一人ひとりに明るくあっけらかんと接しつつ、時に大事なことはしっかり伝えるという、プロフェッショナルな役柄。常に最善を考え、食や命に対して探究していく。その管理栄養士としての情熱をさりげなく表現したいと考えました。スタッフの皆さんと一緒に、良質なシーンづくりができたと思います。」

宇佐川さんから見た藤原さんの演技は『想像以上』だったそうです。「西条小百合はピンポイントではありますが、管理栄養士としても、人としても、主人公の人生を引っ張る情熱あふれる役柄です。藤原さんご自身が情熱にあふれ、これまでの人生できちんと考えてこられたことがわかる演技でした。これ以上ないキャスティングができたと思いました」。
ドラマには栄養学に関連するシーンも多く含まれています。宇佐川さんはたくさんの管理栄養士・栄養士への取材を重ねてきました。「栄養学は日々アップデートされています。そのため、ドラマの中で、栄養や食について断定的にこうだと表現するのが難しく、放映後、視聴者から問い合わせをいただいたこともありました。その度に取材を受けてくださった管理栄養士・栄養士の皆さんから色々な助言をいただき、自信をもって対応することができました」と感謝の言葉を送りました。
楽しみながら、自分の体と向き合う
続いて、トークセッションは普段の食生活の話題に。大阪・関西万博の日本館名誉館長も務めた多忙な藤原さんは、いつも体の声に耳を傾けるようにしていると話します。
「これまでの経験の中で、このような体調の時にはこれを食べようなど、自分に合った食生活をつかんでいます。楽しみながら、自分の体の声を聞く感覚です。よく役者さんが役作りで炭水化物を制限するという話を聞きますが、私自身は1日の食事の半分は炭水化物が良いと感じています。そうしないと頭も体も動かなくなり、舞台やドラマのセリフも覚えられなくなります。時間のある時は自炊して、旬の食材を積極的に取り入れるようにしていますね」。
これについて中村会長は「素晴らしいですね。自分の体に聞くということは大事です。自分に不調を感じた時にどういう栄養を摂ればいいかという知識は私も大切にしていますよ」と絶賛。続けて「食生活の原則はいろいろなものを食べることと、できれば、魚であれば頭から尻尾まで全部食べることです。この2つが基本。主食、主菜、副菜の3つを揃えて、コップ1杯の牛乳と果物を食べれば、大体の栄養素をカバーできます」と食事の基本を解説しました。
さらに、藤原さんは「今日は冷蔵庫に普段あるものをメモしてきました。納豆、山芋、オクラ、バナナ、ハチミツ、豚肉、卵、梅干しなどです。たんぱく質などのバランスに気をつけ、ビタミン、ミネラル、食物繊維などもとれるように考えています。好き嫌いなく、何でも食べています」と食生活を具体的に紹介。
宇佐川さんも「藤原さんにお話を伺うと、基本的な食生活を本当に大切にしていらっしゃるんです」と言い添えました。西条小百合さながらの食への配慮を垣間見ることができました。
若い女性の「やせ」は世代を越えた栄養障害

『おむすび』の中では、さまざまな人間ドラマの中で、若い女性の「やせ」願望の問題も取り上げられています。中村会長は若い女性の「やせ」について、国際的に重要な問題であるとし、世代を越えた栄養障害だと解説しました。「栄養失調状態の女性が妊娠・出産すると、低栄養に適応した子供が生まれ、生活習慣病になりやすくなることがわかっています。私は若い頃に国際的なモデルの学校で栄養学の講師を務めたことがあります。海外の一流のモデルは減量さえできればいいと考えているわけではありません。ハードな仕事をこなすために栄養学を勉強し、栄養失調にならないように気をつけながら体重をコントロールしています」。
それに対して藤原さんは「ファッションモデルの友達に体重のコントロールについて聞いたら、栄養士さんのアドバイスを受けていると言っていました。モデルの皆さんは栄養のバランスをきちんと考えているのですが、それに憧れる若い女性が"やせ=美"だと捉えてしまうのが問題ですね。私自身はスーパーモデルの元祖と言われた"シンディ・クロフォード"のように筋肉があり、脂肪も適度にあるスタイルが健康美だと考えていたので、過度な食事制限はしてきませんでした。時に役作りで体重を落とさなければいけないという場合も、栄養士さんのサポートを受けてきました」とご自身の体験談を紹介しました。
世界の命を支えるという責任
日本栄養士会では、日本が築き上げた「ジャパン・ニュートリション」の栄養改善の知と仕組みを世界に広げる取り組みを行っています。
藤原さん自身も海外での教育支援などに長く取り組んでいます。「食に関する海外支援では、ベトナムで母乳育児の大切さを伝えるプロジェクトを視察させていただいたことが印象的でした。文化的な理由から母乳で育てない民族の方々がいて、下痢や感染症などに苦しんでいました。なかなか母乳育児を受け入れてもらえなかったのですが、活動開始からおよそ5年が経った時に感染症で衰弱したお子さんを看病していたお母さんが、母乳のあげ方を教えてほしいと言ってくださいました。それがきっかけで他のお母さんも母乳育児を始めてくださるようになったのです。このように、海外でも長い時間をかけて栄養の知識の普及に取り組み、成果をあげています。日本栄養士会さんの活動を伺い、母乳の次のステップである離乳食に関する活動も始められていると伺いました。もう次の段階に入っているんだと感動しました」。

栄養士の海外支援について、宇佐川さんにも意見をいただきました。「日本では国をあげて栄養士・管理栄養士を増やす政策をとってきて、それが今につながっています。しかし、海外では同じようにはいかないかもしれません。そこにおいてマスコミに携わる人間としては、伝え方が大事だと感じます。内容は良くても伝え方を間違えると、うまくいきません。最初に誰から伝えるか、どのように伝えるのかというアプローチを改善して、海外でも大きな成果を出していただきたいと思います。今回の『おむすび』は栄養士の皆さんの活動を日本国内に伝えるきっかけにできたのではないかと思います。ここからは管理栄養士・栄養士の皆さん自身で発信することがより大切になります。特に海外での活動には大きな可能性があります。世界の人々を幸せにするジャパン・ニュートリションにおいて、現在はさらに大きく発展する第二の出発点ではないでしょうか」。
お二人のお話を受けて中村会長は「日本栄養士会では約20年間ベトナムで支援活動を行い、今はラオスで行っています。先日、ラオスではこどもの栄養欠乏症が多いという現状があるということから思いました。栄養欠乏症は原因も治療法も予防法もわかっている病気。にもかかわらず、人類は飢餓や肥満の問題を克服できず、患者は増え続けています。食料を調達して調理して美味しく食べて人生をハッピーにするという過程のどこかが欠落しているのです。これをつくり上げていくことが日本の栄養関係者の責任だと捉えて、これからも世界を飛び回っていきたいと思います。今日はこのような時間をいただきまして、ありがとうございました」とトークセッションを締め括りました。
<宇佐川隆史さん プロフィール>
2002年、NHK入局。報道番組のディレクターとして活動した後、大河ドラマ「龍馬伝」(2010年)からドラマ部へ。主な演出に、連続テレビ小説「半分、青い」(2018年)、「くたばれ、坊ちゃん」(2016年)、「4号警備」(2017年)など。2021年より、本格的にプロデューサーとして活動。これまでのプロデュース作品に「正直不動産」(2022年)、「一橋桐子の犯罪日記」(2022年)、海外の映像祭で3冠を受賞した「家出娘」(2022年)など。2024年度後期 連続テレビ小説「おむすび」では制作統括を務めた。
<藤原紀香さん プロフィール>
兵庫県出身。1992年ミス日本グランプリを受賞。大学卒業後、モデルを経て俳優へ。これまで数多くのドラマや映画、舞台で主演、音楽、スポーツ番組の司会やキャスター、声優、歌などで活躍の場を広げる。最新作は舞台【忠臣蔵】で、大石りく役をつとめ全国公演が控えている。
芸能活動のみならず、日本赤十字広報特使に就任するなど社会貢献事業にも積極的に取り組み、現在はNPO「Smile please 世界子ども基金」を主宰。アフガニスタンやカンボジア、ネパールに学校を建設するなど国内外の子どもたちへの教育支援事業を20年以上、継続している。




