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地域で活躍する人や企業の力を集めて兵庫県民の健康課題を解決していく

トップランナーたちの仕事の中身♯029

諸岡 歩さん(兵庫県健康福祉部健康局健康増進課保健・栄養指導班長、管理栄養士)

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 行政機関で働く管理栄養士は、厚生労働省や消費者庁等の国の省庁・機関に勤めて健康・栄養政策を司る国家公務員と、その政策を住民たちに展開していく市役所や町・村役場に勤める地方公務員がいます。都道府県庁にも管理栄養士は所属しており、市町村の管理栄養士に比べると住民との接点は少ないものの、本庁(都道府県庁)と各地域に点在する保健所等で県民の健康づくりを担っています。

 諸岡歩さんは兵庫県庁に入庁して25年目。今は二度目の本庁勤務。その間に加古川保健所、伊丹保健所、加東保健所で勤務してきました。現在は、健康福祉部健康局健康増進課に在籍し、保健・栄養指導班のトップです。主な仕事は、国で決められた食品表示や虚偽誇大広告について県内の食品業者に指導をして、県民の食の安全を守ること、また、県および市町で働く行政栄養士の人材育成をし、「ひょうご食の健康運動」の推進等で県民の食環境を整え、食育を進めることや、県内の給食施設に対する基準に基づく指導で県民の健康を高めていくことです。

 諸岡さんは県庁の管理栄養士としての通常業務だけではなく、人と人とをつないで、新しい事業を立ち上げるのが得意です。資料づくり、企画書づくり等で1人でパソコンに黙々と向き合う時間も、「この業務が住民のためになっているか? 県民の幸せにつながっているか?」と初心に立ち返りながら、新しい事への挑戦を忘れないようにしています。
 昨年(平成29年)に厚生労働省から新たに発表された「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」にも着目し、フレイル対策事業に、配食事業者も巻き込むことを考えています。利用する高齢者の体調や病気等に適した食事を高齢者世帯に直接届ける配食サービスを使いやすくすることで、県民に栄養のある食事をしっかり食べる習慣をつけてもらい、健康寿命を伸ばすことが狙いです。
 一方で、高齢者それぞれがしっかりと食事ができる口腔内の機能を維持できるように、歯科医師、歯科衛生士もこの事業に加わってもらえるように検討を進めています。食べ物を噛みにくい、食べるとむせやすいといった、口腔内の機能のささいな衰えは「オーラルフレイル」と呼ばれ、食欲の低下や体力、気力の低下につながってしまうため、対策が必要とされているのです。

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 県内各地の食品業者や専門職の力を集めて、県民の健康課題を解決するための新しいプログラムを作っていく。それが諸岡さんの仕事であり、得意とするところ。「県内の各市町で取り組みやすい事業を用意して、提示するのが県栄養士の役割です」と、諸岡さんは話します。

地域の医療と介護をつなげた実績

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 諸岡さんは保健所勤務時代にも、県民の健康増進につながる事業を立ち上げてきました。
 伊丹保健所では、管内の2市1町にある病院や高齢者施設等に在籍する管理栄養士たち12名に声をかけて、患者さんが病院を退院して高齢者施設に移るときに(あるいは高齢者施設から病院に入院する際に)、病院や高齢者施設でそれまでに提供していた食事の内容や栄養管理の方法といった情報を施設間で共有できるような仕組みを整えました。

 賛同してもらった管理栄養士メンバーで月に1回「栄養管理連携パス構築にかかるワーキング会議」を開いて検討し、「食形態の基準図表」と「栄養管理ファイル」を作成しました。
 介護食を作ったり、市販のものを使ったりする際に「ポタージュ状」や「こまかいみじん切り」といった大きさや固さ、とろみの状態を表現する言葉が病院・施設ごとにそれぞれ異なります。食形態の基準図表は病院・施設が変わっても、それぞれの口腔・嚥下機能にふさわしい食事をスムーズに提供するための"共通言語"として重要な資料となりました。
 栄養管理ファイルは、そうした食事の形態や内容について栄養情報を書き留めておくもので、病院や高齢者施設の管理栄養士が情報を把握して対応しやすくなり、利用する住民たちもスムーズに栄養管理のサービスを受けることにつながりました。 さらに、お粥やパン粥のつくり方や、脱水症状の予防法などの情報をまとめた冊子「食事サポートブック」も作成しました。現在では、これらのツールは在宅療養中の住民たちにも使用されており、医療から介護まで地域で一貫した栄養管理ができるような仕組みを支えています。

県を超えた支援の取り組み

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 諸岡さんは平成7(1995)年1月に起きた阪神・淡路大震災の前年に、兵庫県庁に入庁しました。当時は、先輩栄養士とともに避難所を巡回して栄養相談に回りました。
 「避難所に行ったものの、当時は何をしていいのかまったく分かりませんでした。被災されたお年寄りたちの気持ちを聴くだけで。栄養アセスメントをして、配られたパンやお弁当をどのようにしたら栄養価を上げたり、食べやすくしたりできるのかまでは考えられませんでした。避難所の担当者への衛生指導も不十分だったと思います。このときの反省の思いが大きくありました。」
 その経験が、平成23(2011)年3月の東日本大震災、平成28(2016)年4月の熊本地震の際の「自治体派遣行政栄養士」としての支援活動に活かされています。

 避難所での食事提供や栄養相談の場面では、健康上の心配が少ない多くの住民たちを対象とするポピュレーションアプローチと、乳児や高齢者、食事療養中の人、食物アレルギーのある人たちを対象とする個別のアプローチが必要になります。諸岡さんが熊本県益城町で支援に入った際には、主にポピュレーションアプローチを担当し、避難所の衛生的な環境を整えるために奔走しました。避難所の責任者には支援物資として配られるお弁当の保管場所を指導したり、食品業者にはビタミンを多く含む野菜ジュースや、常温保存が可能なロングライフ牛乳を依頼したり、菓子パンではなく惣菜パンを発注して、少しでも栄養価が上がるような工夫をしてきました。さらに、地元の管理栄養士たちには「数週間後、数か月後の住民支援がどのように変わっていくか」を被災経験者として伝えました。

諸岡さんは「この仕事の先に、住民たちの健やかな幸せがあるか」をいつも考えています。どんな場面でも、人との出会いと、人々の結びつきを大切にした諸岡さんの実行力は、協力者が集まって自然と大きな輪となり、その輪が広がっていきます。

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プロフィール:
平成6(1994)年3月大阪市立大学生活科学部食物栄養学科卒業。同年4月に兵庫県庁に入庁し、平成29(2017)年4月より現職。(一社)日本公衆衛生協会地域保健総合推進事業研究班員(平成25(2013)年〜平成29(2017)年)、(公社)兵庫県栄養士会理事(平成26(2014)年~平成29(2017)年)、(公社)日本栄養士会公衆衛生事業部企画運営委員(平成28(2016)年〜)。管理栄養士、健康運動指導士。

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