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目の前の子どもたちをもっともっと応援したい!"本物"を伝えて、健康と成長をサポートする栄養教諭

トップランナーたちの仕事の中身♯035

吉村康佑さん(武蔵村山市立小中一貫校大南学園第七小学校栄養教諭、管理栄養士)

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 東京都内の小学校に畑があって、子どもたちが野菜を作っている――。そう聞いたら、「東京でなんて、あり得ない!」と思う人もいるでしょう。新潟県のある農家さんが都内の小学生に「野菜はどこでできるか知ってる?」と聞いたら、「コンビニ!」と答えた子がいて驚いたというエピソードがあるくらい、東京都と畑、東京の小学生と野菜作りはかけ離れているイメージがあります。

 東京都武蔵村山市にある市立小中一貫校大南学園第七小学校には、畑があります。1年生は小松菜、とうもろこし、なす、ピーマン、きゅうり、かぶ、2年生はミニトマト、大根、さつまいも、3年生は大豆、ほうれんそう......というように、全学年で生活科や総合的な学習の時間を使って野菜作りを体験します。野菜作りの企画をして、中心になって授業を進めているのは、栄養教諭の吉村康佑さんです。
 栄養教諭は2005年度に創設された新しい資格制度で、給食の栄養管理、衛生管理をしながら、学校の中で食に関する指導を中核的に担う教員です。それまで学校で働く管理栄養士・栄養士は「学校栄養職員」と呼ばれており、教員免許はありませんでした。吉村さんは栄養教諭として、子どもたちに「"本物"を伝えたい!」という熱い思いがあり、野菜づくりもその一環として始めました。

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 「2年前に第七小学校に赴任してきた頃、給食をしっかりと食べられる子がたくさんいる一方で、残してしまう子も多数いました。給食を残すということを気にしていない様子が見られたので、その理由として"作り手"の気持ちや苦労を知らないことが原因なのではないかと考えました。作り手の1人である私自身が給食の時間に教室をまわって、どのような思いを込めて献立を立てているのか、給食はどのような手順で作られているのか、なぜ残さず食べることが大切なのかを伝えていく一方で、給食で使う農産物を作っている地元の農家さんに協力をしてもらって、子どもたちの野菜作りをスタートさせました」

 吉村さんは学校給食に農産物を納品している農家団体「武蔵村山市農友会新鮮組」のメンバーに、小学生に野菜作りの指導をしてもらうように依頼に行き、現在3名の農家さんが小学校に指導に来てくれています。各学年で作るそれぞれの野菜で、種のまき方、水やりの仕方、間引きのタイミング、収穫の仕方などをそれぞれの時期ごとに教えてもらっています。
 子どもたちは、農家さんから直接指導を受けることで、野菜を作る大変さ、収穫の喜びをより深く味わうことができます。収穫した野菜は、家庭に持ち帰って家族と一緒に夕飯で食べたり、地域で開かれるこども食堂に寄付したり。子どもたちは分かち合うこと、人の役に立つことなども学びます。

 第七小学校の小野江隆校長(当時)は、「子どもたちにとって自分の手で作る体験はとても貴重なものです。野菜作りではうまく育たないこともあると知り、農家さんの苦労、働く人の大変さを身をもって体験します。さらに、コンビニなどですぐに食べられる食品があふれる世の中で、これだけ時間と手間をかけて野菜ができることを学べるということも大きい。食育はまさに"生き方教育"ですね」と話し、吉村さんを中心とした第七小学校での食育の取り組みを誇りに思っています。

給食委員会の5、6年生が心強い

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 吉村さんは、自身が在籍している第七小学校での仕事だけでなく、武蔵村山市の給食センターでの衛生管理、献立作成、食材発注から調理までも担当しています。市内の教員で栄養教諭は吉村さん1人のため、市内の小学校9校、中学校5校での授業やPTAが主催する保護者向けの給食試食会なども吉村さんの仕事です。

 午前中は給食センターで朝から給食を作り、給食の時間に第七小学校に戻ってきて教室をまわって子どもたちが給食を食べる様子を確認し、午後は隣りの第四中学校で授業をして、また第七小学校に戻って授業の準備をする――。そんなふうに市内を飛び回る日も多くあります。そのため、第七小学校に在籍しているとはいえ、毎日給食の時間に全クラスの教室に顔を出して指導をしたり声をかけたりすることは難しく、担任の先生たちや給食委員会の子どもたちに「残さず食べる」取り組みの協力をしてもらっています。

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 最近、吉村さんがとても心強く感じるのは、「君たちが給食のエキスパートだよ!」と期待をしてきた給食委員会の5年生、6年生です。各クラス4人ずつ合計20人ほどのメンバーがいる給食委員会では、毎月の委員会活動の時間に吉村さんがミニ授業をしています。例えばカルシウムについての授業では、「骨は20歳までしか蓄えることができないんだ。だから今、給食を残さずに食べたり、牛乳を飲んだりすることが大事なんだよ。君たちはそれを聞いてどう思う?」と吉村さんが話すと、給食委員の子どもたちは「みんなにも伝えたい!」、「骨の量の変化をグラフで示して教えてあげたい!」と、同級生や下級生に教える方法を考えていきます。そして、全校集会の時間を使って発表しました。

 給食委員会のメンバーは、自主的に下級生のクラスに声掛けをするようにもなりました。給食の時間の後半になると1、2年生の教室を回って「みんな、全部食べた? 残しちゃダメだよ」と声を掛けたり、下膳の時間に給食室の前で「残さず食べてくれたんだね。ありがとう!」と褒めたり、「明日もうちょっと頑張ってね」と励ましたり。食育の輪が子どもたちにも広がっていることに、吉村さんは栄養教諭としての喜びをかみしめています。
 吉村さんが赴任した当初に比べ残菜率が下がってきました。「まさに教員、子どもたち同士の声掛けの賜物だと思いますよ」と小野江校長も成果を喜んでいます。

栄養教諭の仕事を選んだわけ

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 吉村さんは栄養教諭の仕事をする前に、管理栄養士として病院で働いていたことがあります。精神科の病院で、拒食症やリストカットに苦しんでいる中学生や高校生を何人もみてきました。「もっと早い段階で、子どもたちの力になって、心の病で苦しむ人を減らしたい」。そんな気持ちから、学校栄養職員になり、教員免許を取得して、栄養教諭となりました。
 前述のように、栄養教諭となっても、学校給食センターや複数の小・中学校を行き来しているため、個別にじっくりと子どもたちに向き合う時間はなかなかとれません。だからこそ、廊下で子どもたちとすれ違えば、「こんにちは!」とハキハキした声を掛け、休み時間に余裕があれば積極的に子どもたちと遊ぶようにしています。3年生の社会科見学や6年生の修学旅行に同行したり、土日には市内の駅伝大会や百人一首大会に出場する子どもたちの応援に行ったりすることもあります。
 給食の時間には、自分が立てた献立で、さっきまで給食センターで調理していた給食を食べている子どもたちの姿を見るのが楽しみな吉村さん。「野菜が苦手」や、「魚が好きじゃない」と言う子どもたちを励ましながら、その子が食べることができたら「やったじゃん!」とハイタッチをして一緒になって喜びます。
 「目の前にいる子どもたちは、本当に輝いていると感じます。子どもたちのことがわかると、もっと応援したいという気持ちになります。子どもたちの健康と成長を将来にわたってサポートできる栄養教諭は、とてもすばらしい職業です」

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プロフィール:
静岡県立大学食品栄養科学部栄養学科卒業。約1年間、病院栄養士として勤務。2011年4月に東京都の学校栄養職員となり、世田谷区立千歳台小学校に6年間勤務。2017年に栄養教諭となり、武蔵村山市立小中一貫校大南学園第七小学校(2018年度児童数585人)に在籍。

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