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病院管理栄養士の新しい姿。在宅にも、地域にも、挑戦していく

トップランナーたちの仕事の中身♯038

宮司智子さん(医療法人新都市研究会「君津」会 南大和病院栄養部科長,管理栄養士)

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 「栄養士さんって、どこにいるの?」
 さまざまな職域に分かれている管理栄養士・栄養士は、病院や学校、保育所、大学や研究機関等に在籍しているものの、一般の人からするとなかなか出会えない、関わることができない専門職とも言われてしまいがちです。
 2018年度から(公社)日本栄養士会でスタートさせた「栄養ケア・ステーション」の認定制度は、地域の住民の皆さんにとって管理栄養士・栄養士の所在を明確にして、地域の方々が日々の食事・栄養にまつわる相談事ができたり料理教室や講座で学んだりといった、栄養ケアの支援と指導を受けることができる拠点となるように、創設されました。 現在、認定栄養ケア・ステーションは全国に112か所あり、地域の皆さんの栄養の課題を解決する役割を担っています。神奈川県大和市にある南大和病院でも、病院栄養部の管理栄養士たちを中心に、「南大和認定栄養ケア・ステーション」を開設しています。
 病院の管理栄養士・栄養士というと、糖尿病の患者さんや腎臓疾患による透析療養中の方など、主に"治療中"で"食事の制限が必要な人"に栄養指導をしているイメージが一般的かもしれません。しかし、同認定栄養ケア・ステーションでは、「地域のあらゆる人々が参加したいと思える企画」を用意して、管理栄養士・栄養士とともに学ぶ機会を作っています。

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 2019年6月には、「無理なく! 美味しく! 楽しく! 減塩」という料理教室を企画しました。病院の中ではなく、駅前の複合型公共施設の調理実習室で開催して利便性を高め、市内をはじめ近隣の住民たち約10人が参加しました。企画の責任者である栄養部科長の宮司智子さんは、一方的に講座を進めることはせず、参加した住民たちが主体的に調理に取り組めるように、全体的なサポートに徹していました。
 今回の調理実習では、ぶりの照り焼き、筑前煮、ほうれん草のレモン和えの3品を作成。ぶりの照り焼きでは、小麦粉をまぶしてカリッと焼き最後にタレで表面だけを調味することで減塩をし、また、筑前煮には牛乳を使ってコクを出し、めんつゆの量を減らして減塩を達成しました。こうした調理のコツを栄養部主任で管理栄養士の門馬恵理子さんが紹介し、管理栄養士養成校の1つである神奈川県立保健福祉大学からの実習生2人が調理の補助に入りました。
 調理の前には、「ご自宅のみそ汁を持参されると、塩分濃度を測定できます」と告知していたため、実習生が担当しながら参加者のうちの数人がみそ汁を持参して計測をしました。また、調理後の試食中には、実習生2人が模造紙を使って「なぜ、塩分を減らすことが必要なのか」をテーマにミニ講座を担当しました。宮司さんは、自身が担当している訪問栄養食事指導にも、実習生を連れて行き、在宅の現場での調理や身体計測を体験させています。

 宮司さんは後輩の管理栄養士や"管理栄養士の卵"が、地域の人々により多く接する機会を作れるようにし、「病院の管理栄養士が地域の皆さんに接するのが当たり前」の環境を用意しているのです。

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 宮司さんは、自宅で療養している重症な方たちの栄養管理ができる「在宅栄養専門管理栄養士」の資格も有しています。この資格は、(公社)日本栄養士会と(一社)日本在宅栄養管理学会が共同認定をするもので、在宅でそれぞれの生活状況を踏まえた栄養管理に関して高度な知識と技術をもち、その方のQOL(Quality of Life:生活の質)向上に貢献でき、さらに地域で活動する他の専門職と協働できる管理栄養士を認定しています。
「在宅訪問栄養食事指導ができる管理栄養士を1人でも多く増やす」ために、宮司さんは病院実習で訪れた学生たちにも在宅の現場を経験させているのです。

 病院の管理栄養士でありながら、認定栄養ケア・ステーションや訪問栄養食事指導で"病院の外"で活動することが増えてきた宮司さん。当然ながら、病院の中の業務をおろそかにしているわけではありません。
 南大和病院に勤務して約20年。現在は大学教授、准教授となって退職された元上司たちのもとで、治療食の調理業務、献立作成や衛生管理などの給食管理、病棟を担当しての栄養管理やNST(Nutrition Support Team:多職種連携での栄養管理チーム)活動、外来栄養指導等、病院管理栄養士としてのあらゆる業務を経験してきました。

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 「自分が科長という栄養部の実質的な責任者となって1年が経ち、今までたくさんの指導をいただいてきた分、これからは私が皆を育てていかなければなりません」と宮司さんは話し、部下となる管理栄養士4人、栄養士1人、そして毎月のように受け入れている実習生たちに、病院内外の仕事を割り振り、栄養部のマネジメントに注力しています。
 取材中も、「ちょっと相談があるのですが...」という管理栄養士の声掛けに足を止めて対応。仕事を割り振って任せている以上、「どんなことでも相談しやすい上司でいよう」と決め、部下や実習生に相談等で声を掛けられたときは、すぐに対応し、きちんと向き合って話を聞くようにしています。前述の料理教室で減塩の大切さのミニ講座を任せた実習生たちにも、宮司さんがテーマを提示したあとに、学生が構成を考えたとき、話す内容を決めたときなどのタイミングで相談や報告を逐一できるようにあらかじめ声掛けをしていたため、実習生2人は参加者の前で堂々と発表することができていました。
 新人の頃に学んだ「できないではなく、どうやったらできるかを考える」ということを座右の銘にして、宮司さん率いる栄養部の管理栄養士とその卵たちは、あらゆることに挑戦をしていきます。

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 最近では、外国人向けの外来栄養指導が増えてきました。南大和病院の近くには、多国籍の外国人が多く住む団地があり、病院の方針で外国人の患者さんを積極的に受け入れるようになったためです。スペイン語やカンボジア語を話す患者さんも少なくありません。
 言葉がうまく通じなくても、宮司さんたち管理栄養士は積極的。さまざまな言語の患者さんに合わせて少しずつ新しい外国語の栄養指導媒体を作りためていて、指導に役立てています。時にはその場でインターネットで調べたり、写真を見せたり数字を使ったりして"適量"を示し、家庭で実践できるようにしています。管理栄養士たちはそれぞれの国や地域の食文化を調べ、お互いに情報共有をして、外国人患者さんへの栄養指導のレベルを底上げしています。

 病院から、在宅、そして地域のあらゆる人々にとって「なくてはならない存在」になるために。病院の中だけに閉じこもらない、病院管理栄養士の新しい姿を、宮司さんは開拓しています。

プロフィール:
1999年、関東学院女子短期大学専攻科食物栄養専攻卒業。同年、(医)新都市医療研究会「君津」会 南大和病院入職。2003年、管理栄養士資格取得。2008年より栄養科主任、2017年より栄養部科長。在宅栄養専門管理栄養士。

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