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アスリートの活躍を食でサポート!選手と二人三脚で挑む世界の大舞台

トップランナーたちの仕事の中身♯046

堀越理恵子さん((株)タニタヘルスリンクヘルスケアサービス部門サービス推進部・管理栄養士)

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 新型コロナウイルス感染症の拡大により東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)の開催が、来夏に延期されることになりました。東京五輪に照準を定めて練習に励んでいた選手は、先の見えない戦いに不安を感じていることでしょう。女子20km競歩で世界の頂点を目指す岡田久美子選手(ビックカメラ所属)も、この難局に立ち向かうアスリートの一人です。岡田選手は1時間27分41秒という歴代日本最高記録保持者として東京五輪での活躍が期待されています。
 岡田選手が、身体づくりの根幹にかかわる食事において最も信頼する人物、それが(株)タニタヘルスリンクに勤める公認スポーツ栄養士の堀越理恵子さんです。

 二人の挑戦が始まったのは2015年。岡田選手は日本選手権で優勝を狙える女子競歩界の期待の新人でした。栄養サポートの依頼を受けた堀越さんは、「その頃の彼女は大きく2つの課題を抱えていました。1つは、主に夏場の貧血で、もう1つは、レース時やレース後の腹痛でした」と、振り返ります。
 1つ目の課題に対して、当時の岡田選手は担当医から貧血予防として鉄剤を処方されていました。しかし、堀越さんは岡田選手から日々の練習についてヒアリングする中で、根本的な問題は食事量が足りていないことだと感じるようになりました。競歩のトレーニングと言うと、ひたすら歩き続けるというイメージがありますが、そんな単純なものではありません。たとえば、5kmを全速力で歩いて3~5分間休憩し、また全速力で5kmを歩いて休む。これを4回繰り返すというような、身体に極限まで負荷をかける過酷な練習を続けることで勝てる身体をつくっていくのです。このような過酷な練習に耐え得る身体をつくるためには、膨大な消費エネルギーに見合うだけの高エネルギーな食事をとることが重要になります。インターバルを取り入れた過酷な練習を繰り返すことを考慮し、まずエネルギーから全体の食事量を見直しました。岡田選手はもともと、鉄剤に頼らず食事で解決したいという思いがありましたので、その上で、鉄を含む食材を献立に組み入れるようアドバイスしました」。

食事管理アプリを活用した遠隔でのサポート

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(左:堀越理恵子さん、右:岡田久美子選手)

 選手のトレーニング内容は多岐にわたり、練習場所は国内とは限りません。当然、練習内容や環境に合わせて、必要とされる食事内容も大きく変わってきます。堀越さんは海外遠征時も、24時間体制で食事相談に応じています。その際には、タニタヘルスリンクの食事管理アプリ「HealthPlanet Food」を活用して日々の体調や練習内容、食事内容を把握することにより、アドバイスに役立てています。 こういったアプリを使うことで、時差があってもこまめに連絡が取り合え、また、食事の写真や堀越さんのコメントが記録として残ることで、調子が良かった日や悪かった日を、選手自身で振り返ることができる利点も生まれました。
 「試合や遠征、海外でのトレーニングにも帯同できればいいのですが、契約の関係で、それはできません。そこで、合宿時はホテルの食事内容を写真で送ってもらい、不足傾向のある栄養素が補える食材を伝えたり、ホテルへメニューの改善を依頼したりしていました。自宅での食事や外食、遠征時等、プライベート時も同様に、送られてきた写真を確認しながら、エネルギーやたんぱく質量の過不足、ビタミンやミネラルの不足などを指摘し、改善するための食事プランを提案しています」 。

 こうした栄養サポートを継続する中で、岡田さんの2つ目の課題であったレース時やレース後の腹痛の原因も見えてきました。それらを1つ1つ確認しながら取り除くことで、腹痛を軽減することができたのです。「彼女が困っていることに向き合い、その解決に向けて体組成データや食事管理アプリの数値に基づきながら一緒に考え、行動変容を促す。その繰り返しが彼女の精神的な安心にもつながったのではないかと思います」。

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 海外遠征中の岡田選手からの相談メッセージが送られてくる際は、時差の関係で深夜の対応が必要になることも多いといいます。堀越さんは、どんな状況でも可能な限り、迅速にレスポンスすることを心掛けています。頑張っている選手と一緒に戦っていると思うからこそ、わが事のように熱心になれるのです。こういった堀越さんの真摯な対応が、岡田選手との信頼関係構築につながっているのです。 また、顔の見えないやり取りの中で信頼関係を築いていくためには、日ごろから文面を丁寧に見て、選手の性格を把握することも大切だと堀越さんは話してくれました。「前向きな選手がネガティブな発言をしている、いつも絵文字を使ってくるのに使われていない、こういった小さな変化にも気づけるよう、常にアンテナを張っています」。

五輪延期は楽しみが先に延びただけ

 岡田選手と堀越さんの目標は、世界の大舞台でのメダル獲得です。その達成のために何年も前から、"本番"に体調のピークがくるよう、日々の消費エネルギー量を見定めながら栄養戦略を立て、実践してきました。筋肉組織の状態の変化は(株)タニタの体組成計を使って点数化して管理するなどメダル獲得に向けた身体づくりにぬかりはありません。 東京五輪が来年7月に延期されることとなり、計画してきた栄養戦略は見直しが迫られました。岡田選手を支え続ける堀越さんのプレッシャーは、大変なものだろうと表情をうかがうと、意外にも柔らかい笑顔でこう言いました。「楽しみが少し先に延びただけ。私たちの目標は出会ったころから同じ、世界の頂点です。ゴールが少しだけ先になっただけで、気持ちに変わりはありません」。

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 堀越さんは、今後の夢についてこう語ります。「長年にわたってアスリートの栄養サポートをしていると、食べる力のある選手はやはり、戦績を残す可能性が高いと実感します。私は今、岡田選手のようなトップアスリートの他、サッカーのジュニアチームの栄養サポートも担当しています。子どもたちに勝つための栄養サポートはもちろん、試合の反省をしながら仲間と囲む食事の楽しさ、志を同じくする仲間と一緒に食べるうれしさなど、食を通した人と人とのつながりの大切さをしっかりと伝えていきたいと思っています。食をともにする喜びの中で、世界と戦える食べる力のある選手を1人でも多く育てていくことが夢です」。

プロフィール:
山梨学院大学法学部卒業後、弁護士秘書として法律事務所に就職。かねてからスポーツと食べることが好きだったこともあり、スポーツ栄養を志し、2005年に管理栄養士養成校へ入学。管理栄養士免許取得。その後、小・中・高等学校の給食管理業務を経験し、特定保健指導を行う企業を経て、現職に至る。(株)タニタヘルスリンクではカウンセリング業務や健康セミナーの講師を務める傍ら、Jクラブ所属のサッカーチームや実業団所属のアスリートの栄養マネジメント等、スポーツ栄養に関わる業務をメインで担当している。公認スポーツ栄養士。

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