研修会もおトクな会員価格で参加!

入会

マイページ

ログアウト

  1. Home
  2. 特集
  3. 管理栄養士と保育士、2つの視点を生かした食育活動

管理栄養士と保育士、2つの視点を生かした食育活動

トップランナーたちの仕事の中身#087

松田結希さん(食育保育園®豆の木ハウス、管理栄養士)

20240201_1.jpg

 松田結希さんは管理栄養士として10年のキャリアを積んだ上、さらに保育士の資格を取得。全国で初めて「食育保育園」が商標登録され、食育に力を注ぐ保育園で2つの資格を生かした働き方をスタートさせました。「食育保育園®」の取り組みと、松田さんが目指す食育について伺いました。

「食育保育園」の商標登録を取得

 松田結希さんが勤める福島県郡山市の食育保育園®豆の木ハウス(以下、豆の木ハウス)は2005年の設立以来、一貫して食育に力を注いだ保育を行っています。2020年には理念を共有するNPO法人日本食育協会を商標権者として、全国で初めて「食育保育園」の商標登録を取得しました。

 「郡山市内に4つの姉妹園があり、すべて食育保育園®です。私が勤務する園は0~2歳児の保育を行っています。卒園後は3歳児以上の保育を行う姉妹園に転園することが多いので、最長6年間、恵まれた食育環境で過ごせます」と松田さん。
 近年、保育士資格取得に使用するテキストで「日本食育協会」、「食育指導士」、「食育保育園®」について触れられる等、食育の重要性を学んだ保育士が育成されるように。松田さんは豆の木ハウスに就職する前は病院、高齢者福祉施設で栄養指導業務、保育施設では委託給食に携わる等、管理栄養士として10年のキャリアを持ちますが、それにとどまらず2022年には保育士の資格も取得しました。
 「自身の子育てを通じて、こどもの成長を間近で見守れる保育士の仕事のすばらしさを知り、こどもや保護者のサポートができる保育士の仕事に就きたいと思ったからです。こどもにとって食がいかに大切であるかは管理栄養士として理解していましたので、豆の木ハウスで食育と保育の両面に携わりたいと思いました」

給食は、こだわりの和食材が中心

20240201_2.jpg

 豆の木ハウスの食育の中心を担うのが、手作りの給食とおやつです。
 「和の伝統的な食材『まごわやさしい(ま=豆、ご=ごま、わ=わかめ等海藻類、や=野菜、さ=魚、し=しいたけ等きのこ類、い=いも)』を満遍なく取り入れ、調味料やだしは原材料と製造法を確認して、納得のいくものだけを使っています。
 給食では、魚のおかず、野菜やおからの煮物、野菜のあえもの等、伝統的な和風のおかずが多いのですが、こどもたちはおいしそうにほぼ全員が完食します。味の決め手は削り節、しょうゆ、砂糖の代わりにプルーンエキスで甘みを加えた自家製めんつゆです。『作り方を知りたい!』という保護者の声に押され、園の料理とおやつを『まめっこレシピ』という4冊のレシピ本にまとめました。簡単に作れて、大人もおいしく食べられると好評をいただいています」
 厳選した食材を使用するため、食材費は一般的な保育園に比べて4~5倍かかるといいます。
 「『食材を見直すことが、食育の第一歩』が、設立以来の信念です。少子化が進む中、毎年応募が満員になるのは、長年の取り組みが口コミで広がり、保護者に認めていただいている証しだと感じています」

医師と連携した食物アレルギー対応

 栄養の充実も徹底しています。大切にしているのが、ロジャー・ウィリアムが提唱した理論「生命の鎖」という考え方です。体内で生成できない46種の必須栄養素をつなげて鎖の輪に見立てると、1種類でも摂取量が満たされなかったり、欠けたりすると鎖が切れてしまう。鎖が切れた状態は、栄養素の相互作用がうまくいかなくなり、健康に悪影響を及ぼすことを表すものです。
 「当園では昼の給食、午前10時と午後3時のおやつを提供しており、これらを食べれば不足しやすいたんぱく質、鉄、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、食物繊維が摂取できるようにしています。おいしく摂れるようにするため、大豆粉、プルーンエキス等の他、良質な脂質の供給源としてバージンオリーブオイルやアボカドオイルを取り入れています。季節の果物、豆腐、オリゴ糖、乳酸菌顆粒等を混ぜたオリジナル豆乳は毎日の定番おやつで、園児にも大人気です」
 さらに、保護者から信頼を得ているのがきめ細かい食物アレルギー対応です。除去食対応を基本として、園児のかかりつけ医と綿密に連携し、定期的にIgE抗体等の検査データの変化を確認しながらケアを進めていきます。
 「保護者には、避けた方がよい食物や除去食レシピを教える等のフォローをしています。前職で、管理栄養士としてアレルギー除去食の対応をした経験を生かして、こどものささいな変化を見逃さないように気を配っています。保護者から『湿疹や赤みが消えて、夏に半袖が着られるようになった』、『学校給食が始まる前によくなって安心した』と感謝の言葉をいただけるとうれしいですし、一人ひとりに適した対応ができるように、さらに努力しようという気持ちになります」

知識と自信を育む食育活動

20240201_3.jpg

 取材で豆の木ハウスに伺った日は、食育活動の一つである「キッズインザキッチン」が行われていました。2歳児11人が参加するのは、「ごまおにぎり作り」です。1人に1個ずつ小さなすり鉢とすりこ木が配られると、一斉にゴリゴリ。1歳の頃から経験しているおかげで、あっという間にすり上がります。ごはんにすりごま、わかめ、プルーンエキスを混ぜるとき、自分で好きな形のおにぎりを握るときは、ひときわ楽しそう。昼の給食では、全員が真っ先に自分で作ったおにぎりをほおばって、「おいしい!」とにっこり。
 「『これ、作ったんだよ』と見せに来て、普段以上においしそうに食べる様子にふれる度に、こうした経験が自信と満足感につながることを実感します。また、近頃は水道の蛇口をひねる、雑巾を絞るといった手首を使った動作が減っているので、ごまをする作業を経験することで、少しでも補っていければとも考えています」

 3歳児以上の保育を行う姉妹園では、こども用包丁を使った料理も行っており、手のひらの上で豆腐を切ることから始め、5歳になると園児全員が魚1尾を3枚におろせるようになるといいます。
 「『手のひらの上で包丁を押したらダメだよ』、『切ったら血が出て痛いよ』等、前もって危険なことを説明すると、こどもはきちんと理解します。こうした説明に加え、実習時は管理栄養士と保育士が目を離さずに指導することで、安全に行えています。『けがをする可能性があるからやらない』のではなく、『安全にできる方法と環境を整える』ことが食育の可能性を広げるのだと思います」
 この他にも、動画サイトや絵本を利用して食品の製造工程、野菜や果物の栽培等を学ぶ時間を「食育Jr.」、「まごわやさしい」にあたる食物を学ぶ時間を「食育講座」と名付け、それぞれ月に1回のペースで実施。保護者からは「こどもが園で学んだことを家族に教えてくれるので、その度に、もっと大人が意識を高く持たなければとドキッとする」とよく言われるといいます。

 「実は、豆の木保育園®の食育は、園児を通して保護者に食の重要性を伝えることを最終目標の一つにしています」と松田さん。松田さんをはじめ園のスタッフは、食育活動の積み重ねが実ってきている手ごたえを感じています。
 「私自身は、将来こどもたちには自信を持って、毎日をワクワクしながら生きてほしいと思っています。栄養を満たした食事や食物アレルギー対応はとても大切なことです。一方で、1歳くらいになると食べるか食べないかをこども自身が判断できるようになります。こどもの意思を無視して栄養を満たすために食べさせるのではなく、『食べることは楽しい』という感覚を幼いときに覚えてもらうことが一番大事なことだと考えています。私の仕事のモットーは『食べたもので身体はつくられる』、『選んで食べて健康未来』です。これらのことを、こどもたちが身に着けていけるように、これからも日々、サポートに努めていきたいと思います」

プロフィール:
2011年郡山女子大学家政学部食物栄養学科卒業。2011年管理栄養士を取得。管理栄養士として高齢者福祉施設、保育園に勤務。2022年に保育士を取得し、同年から現職。福島県栄養士会所属。

賛助会員からのお知らせ