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現場の声を汲み取り、 栄養部の業務改善活動に積極的に取り組む

トップランナーたちの仕事の中身#121

重松由美さん(株式会社麻生 飯塚病院栄養部技師長)

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 株式会社麻生 飯塚病院の管理栄養士であり、栄養部技師長として、業務改善活動に積極的に取り組む重松由美さん。給食運営が直面している人手不足、物価高騰等の課題への取組について伺いました。

改善活動により、管理栄養士の病棟常駐体制を実現

 管理栄養士の重松由美さんは、福岡県の中部に位置する株式会社麻生 飯塚病院(以下、飯塚病院)栄養部で2013年から栄養部技師長を務めています。
 「当院は1918年に開設され、地域医療支援病院として地域医療を担っています。定床数は1,002床、病棟数は33病棟あり、現在、栄養部には管理栄養士38名、栄養士16名、調理師11名、調理補助員22名が在籍しています。管理栄養士は給食部門または臨床部門に所属して業務にあたっています」
 重松さんは栄養部全体と給食部門の業務マネジメントを兼務し、総勢85名のスタッフ一人ひとりの円滑な業務のための管理を行っています。
 「栄養部のスタッフは、元々これほど多かったわけではありません。私が入職した2001年では管理栄養士は5名、栄養士は7名ほどでした。当時、栄養部は主に給食管理を担い、栄養食事指導等の臨床業務はわずかでした」と重松さんは振り返ります。
 管理栄養士がこれほど増員したきっかけは、2007年からスタートした管理栄養士の病棟常駐体制に向けた5カ年計画でした。
 「2009年に、前職の病院で管理栄養士の病棟常駐体制を経験していた現在副技師長の田代さんが栄養部に入職し、導入の提案がありました。栄養部として、なんとか臨床業務を拡大したいと考えていた時期でもあり、当時の科長と話し合いを重ね、経営側との交渉を決めました」
 そこで、重松さんは田代さんと一緒に管理栄養士の病棟常駐体制の効果についてモデル病棟を設置し、その効果を検証しました。
 「経営側には、管理栄養士が病棟に常駐することで病態や摂取状況に応じたきめ細かな個人対応を行うことが可能となり、先手の栄養管理で栄養状態の改善につながり入院日数の短期化が望めること、病態に応じて栄養食事指導の提案がしやすくなることで、入院栄養食事指導料の診療報酬加算による増収が見込めること、多職種との連携がよりスムーズになること等、何より患者に有益であることを説明しました。プレゼンテーションでは、病棟常駐を全病棟に水平展開することによる予想増収額も算出して示しました。こうした話し合いを重ね、管理栄養士の病棟常駐を実施し、5カ年計画で体制を整備することが可能となりました」

栄養業務の標準化のためのマニュアルを作成

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 以前から、飯塚病院には各部署の業務改善をサポートする改善推進本部が設けられており、活動期間が3カ月の「改善ワークショップ」と活動期間がそれよりも長い「TQM活動」(Total Quality Management;総合的品質管理)が病院全体で行われています。病棟常駐の実施当初は、病棟常駐業務が未経験の管理栄養士が多かったため、病棟業務の充実化を目的にTQM活動を実施しました。問題解決として病棟での業務内容や多職種との連携の仕方等のマニュアルを栄養部で作成して業務の標準化を行いました。
 「その他、経験年数の浅いスタッフでも栄養管理マニュアルに沿った栄養管理を徹底してもらい、適切な栄養管理を行うことで入院期間の短縮を図れることを定期的に経営側にアピールしました。また、病棟常駐により患者一人ひとりの病態を深く把握できるようになると、特別食が必要な患者に医師から常食のオーダーが出ているケースが少なくないことに気付きました。そこで、TQM活動を行い、特別食を必要とする要件をマニュアル化して判断ミスを防いだうえで、必要と思われる場合は医師に特別食への変更を提案しました」

 これらの取組により、特別食の指示の見落としが減り、特別食加算、栄養食事指導件数の増加につながったということでした。こうした実績が経営側に認められ、5年間で管理栄養士は9名増員され、その後も増員が認められた結果、現在の38名まで増え、臨床業務を拡大することができました。
 「従来、新採用の管理栄養士の指導には先輩管理栄養士がマンツーマンで指導するプリセプター制を取っていますが、増員に伴い指導者の業務にしわ寄せが生じました。そこで、改善ワークショップで指導症例の選定にかかる手順の効率化、標準的な業務フローは動画教材化して事前学習してから指導を受ける仕組みを作り対応しました」

業務の見直しで、人手不足、人件費や食材料費の高騰に対応

 近年の給食現場が直面する人手不足、人件費や食材料費の高騰等は、飯塚病院も例外ではないです。
「人手不足に関しては、TQM活動のQC(Quality Control;品質管理)手法を使い、子育て世代が働きやすくするために早番(5:30~6:00出勤)と遅番しかなかったタイムスケジュールの見直しを行い、8:30出勤の日勤枠を新設し、保育所等の送迎との両立を可能にしました。改善活動のリーダーには、子育て世代の栄養士を任命し、できるだけ実情に即した改善策を目指したことが結果につながったと思います」
 この改善活動は年に1回、飯塚病院の全部署が参加するTQM活動発表会で高く評価され、2022年度の審査員特別賞を受賞しました。さらに改善推進本部の勧めから第6465回QCサークル部門QCサークルグランドチャンピオン大会(一般財団法人日本科学技術連盟主催)に応募すると、多くの応募事例の中から見事に審査員賞を受賞しました。

 この受賞は栄養部にとって大きな自信となりました。その後も改善活動は一気に弾みをつけていき、人員不足場所で高齢化していた食器洗浄部門の改善を管理栄養士の主任たちがリーダーとなり取り組み、高齢スタッフでも負担がかからない洗浄機の使い方や無理なくこなせるタイムスケジュールをマニュアル化しました。改善後当初は、職人技での作業であったため若手スタッフが支援しにくい環境でありましたが、中堅管理栄養士の説明力と現場力で標準化の定着まで可能となり、朝の洗浄人員を8人から6人に削減、一部スタッフの退勤時間を30分繰り上げる成果を上げました。続いて取り組んだ献立のコスト削減では、病態によって多種類のおかずを作り分けていた従来の方法を見直し、おかずの種類を厳選して食材費と調理工程を削減しました。
 「献立のコスト削減では、調理スタッフの慢性的な不足が緩和したことも評価され、経営グループの全ての系列会社の中でもっとも優れた改善活動に贈られる社長賞を受賞することができました。現在は、栄養部にとって45年来の念願である老朽化した厨房の更新の実現と、数年にわたる交渉の末、導入が決まった全病棟への温冷配膳車の運用を軌道にのせることが目標です」

日本一のまごころ栄養部を

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 25年にわたり病院の管理栄養士を務めてきた重松さんには、忘れられない言葉があります。
 「あるとき、外部の関係者から『管理栄養士・栄養士は、福祉の側面を持つ代えがたい仕事。誇りを持ってください』といわれ、ハッとしました」
 飯塚病院は「日本一のまごころ病院」を合言葉に、患者中心で質の高い最適医療の実践を基本方針に掲げており、重松さんは栄養部を「日本一のまごころ栄養部」にしたいと思っています。

 「栄養部が実施してきた改善活動は、管理栄養士・栄養士をはじめとするスタッフが、不具合等を率直に伝えてくれたことで改善箇所をみつけられました。現場の声に耳を傾けて実施した改善活動は、きちんとした成果が得られると実感しています。まごころのこもった食事の提供とスタッフの笑顔を絶やさない職場づくりを目指して、今後もより良い業務管理に努めていきます。また給食管理には、臨床に関する幅広い知識や最新の情報も必要ですので、管理栄養士としてのスキルアップにも力を入れていきたいと思います」

プロフィール:1996年中村学園大学短期大学部食物栄養学科卒業。同年富士産業株式会社に入社し、福祉施設での栄養士業務、退職後に事務職を経て、2001年株式会社麻生飯塚病院に入社。2002年に管理栄養士資格を取得。2013年より現職。福岡県栄養士会所属。

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